「静岡 一之宮神社」と検索すると、いくつかの神社名が並びます。
東西に広い静岡県はかつて、駿河国(するがのくに)・遠江国(とおとうみのくに)・伊豆国(いずのくに)という3つの旧国に分かれていました。
そしてそれぞれの国に、一之宮と呼ばれる神社が存在します。
そのため、静岡県に〝ひとつだけ〟の一之宮神社があるわけではありません。
この記事では、
- 静岡の一之宮神社はどこなのか
- 旧国ごとの一宮一覧
- 実際に訪れて感じたこと
を、情報と体験の両方から丁寧にまとめます。
なお、全国の「一之宮神社一覧」はこちらでご確認いただけます。

※全国の一之宮一覧は中世諸国一宮制の基礎的研究(岩田書院、2000年)を元に作成。全国一の宮会非加盟の神社や、論社(式内社を受け継いでいる可能性があるものの確定ではない神社)も含まれています
静岡の一之宮神社は4社


結論からお伝えすると、静岡県の一之宮神社は旧国ごとに存在し、遠江国には2社あるため計4社となります。
- 駿河国一之宮:富士山本宮浅間大社(ふじさんほんぐうせんげんたいしゃ)
- 遠江国一之宮:小國神社(おくにじんじゃ)、事任八幡宮(ことのままはちまんぐう)
- 伊豆国一之宮:三嶋大社(みしまたいしゃ)
一之宮とは、平安時代に国司が国内で最も社格の高い神社として定めた神社のことを指します。
「一宮」「一之宮」と表記は異なりますが、意味はほぼ同じです。
けれど、ここで少し視点を変えてみます。
一之宮とは単に「格が高い神社」なのでしょうか。
長い時間、地域の祈りを受け止めてきた場所。
それが一之宮の本質ではないかと、私は感じています。
静岡の一之宮を巡っていると、富士山や豊かな森、澄んだ水といった「圧倒的な自然の力」への畏敬の念が、人々の心の拠り所になっていたことを強く感じます。
「この土地の人たちが、自然の恵みに感謝し、時に畏れながら、立ち戻ってきた場所」という意味が含まれているのかもしれません。
駿河国一之宮|富士山本宮浅間大社
基本情報
駿河国一之宮とされるのが、富士宮市に鎮座する富士山本宮浅間大社です。
全国に約1,300社ある浅間神社の総本宮であり、富士山そのものを御神体としています。
主祭神は木花之佐久夜毘売命(このはなさくやひめのみこと)。
安産や縁結び、火難消除などのご利益で知られています。
現在の本殿は徳川家康公が造営したもので、境内には富士山の雪解け水が湧き出す「湧玉池(わくたまいけ)」があり、息を呑むほどの透明度です。
JR身延線「富士宮駅」から徒歩約10分。
広大な駐車場もあり、アクセスは非常に便利です。
御朱印も授与されています。
遠江国一之宮|小國神社・事任八幡宮
遠江国には、一之宮を称する神社が2社あります。
貴族の時代から武家社会に移り変わる中で、一之宮神社が途中で変更されたとのこと。
どちらも深い緑に囲まれた神社です。
基本情報:小國神社(おくにじんじゃ)

周智郡森町に鎮座する小國神社。
主祭神は大己貴命(おおなむちのみこと/大国様)です。
縁結びや厄除け、心願成就の神として古くから信仰を集めています。
見どころは何といっても、樹齢数百年の杉や檜に囲まれた広大な鎮守の森。
秋には紅葉の名所としても有名です。
天竜浜名湖鉄道「遠江一宮駅」から送迎バス(特定日運行)または車でのアクセスが基本となります。
わたしは掛川駅からレンタカーをお借りし、事任八幡宮の後に参拝しました。
御朱印は書置きと直書きの両方があります。

実際に立ってみて感じたこと
わたしは2026年2月に参拝しました。
「おくにじんじゃ」という柔らかな響きから軽やかな場所を想像していましたが、杉並木の静寂に一瞬で背筋が伸びました。
境内で足が止まったのは、徳川家康公が困難の中で休息したという「立ちあがり石」。
プレッシャーに震えながら自分を奮い立たせていた姿を想像すると、歴史の英雄が急に血の通った人間として迫ってきました。
「弱くても、そこから立ち上がればいい」。
参拝後に食べた塩気のあるお団子が、内省していた私を一気に心地よい現実へと引き戻してくれました。
小國神社は、何かをもらう場所ではなく、余計なものを落としていく場所。
「ここからまた始めていこう」と、自分の足で立つ決意を静かにくれる場所だと感じました。

基本情報:事任八幡宮(ことのままはちまんぐう)

掛川市に鎮座する事任八幡宮。
主祭神は己等乃麻知比売命(ことのまちひめのみこと)です。
「事のままに願いが叶う」という社名から、古くから多くの旅人や文人が立ち寄ったとされ、『枕草子』にもその名が登場します。
本宮の山を少し登り、白い石を磨いてお祈りする作法が特徴的です。
道の駅「掛川」のすぐ近くにあり、車でのアクセスが便利です。

実際に立ってみて感じたこと
わたしは2026年2月に参拝しました。
あいにくの小雨でしたが、境内の空気は丸く優しく、清々しい気持ちになりました。
山道を10分ほど登った先の本宮で、白い石を磨く習わしがあります。
私が手に取ったのは少し泥のついた石。
それを磨いているうちに「綺麗な感情も、人に見せたくない感情も、全部ひっくるめて私なんだ」という思いが込み上げてきました。
無理にポジティブでなくてもいい。泥がついたままでも愛おしい。
「願いを叶えてもらう」ために来たはずが、気づけば「今のままの私で大丈夫」と安堵していました。
事任八幡宮は、「事のままに願いが叶う」場所というよりは、言葉と心がズレてしまったとき、そのままの自分を優しく受け入れ、言葉をチューニングし直してくれるような温かい場所だと感じました。
神職の方とのやり取りも暖かく印象に残っています。

伊豆国一之宮|三嶋大社
基本情報
伊豆国一之宮とされるのが、三島市に鎮座する三嶋大社です。
源頼朝が源氏再興を祈願したことでも知られ、武門の崇敬を集めた歴史ある神社です。
主祭神は大山祇命(おおやまつみのみこと)と積羽八重事代主神(つみはやえことしろぬしのかみ/恵比寿様)。
商売繁盛や家内安全、厄除けなどのご利益で広く信仰を集めています。
JR三島駅から徒歩約15分。
周辺には富士山の湧水が流れる川もあり、散策にもぴったりです。
御朱印も授与されています。
静岡の一之宮神社を巡るにあたって

静岡の一之宮神社を1日で巡れますか?
- 1日で全て回るのはおすすめしません(静岡は東西に長すぎるため)
- 伊豆・駿河(東部)と、遠江(西部)で日を分けるのがベター
- 無理なスケジュールを組まない
一之宮巡りはスタンプラリーではありません。
特に静岡県は新幹線が何駅も止まるほど横に広いため、三島大社(伊豆)から小國神社(遠江)まで移動するだけで半日が終わってしまいます。
移動の多い1日よりも、一社にゆっくり滞在する時間のほうが、後から心に残ることがあります。
わたしは伊豆・駿河・遠江すべて別日に伺おうと思っています。
なお、小國神社と、お隣の愛知県にある砥鹿神社(愛知県豊川市)のご由緒がとてもよく似ていて、車で1時間ほどの距離なので、こちらの二社を併せて参拝するのもお勧めです。
静岡の一之宮巡りの交通手段は?
三嶋大社、富士山本宮浅間大社は最寄駅から徒歩で参拝できます。
小國神社・事任八幡宮は最寄駅からバスに乗り換える必要があるので、時間に限りがある場合はレンタカーを借りたほうが安心です。
なお、小國神社に最も近い第一駐車場は少し狭いように感じたので、レンタカーの場合や運転に不安がある場合は少し離れた駐車場に停めることをお勧めします。
一之宮巡りに意味はありますか?
意味は、後から自分の中で見つかるものかもしれません。
まとめ|静岡の一之宮は“自然と自分を結び直す場所”
静岡の一之宮神社は、
- 駿河国:富士山本宮浅間大社
- 遠江国:小國神社・事任八幡宮
- 伊豆国:三嶋大社
それぞれが、富士の湧水や深い森の息吹とともに、長い歴史の中で祈りを受け止めてきました。
お願いをしに行くのも、御朱印をいただくのもいい。
でももし今、少し立ち止まりたいと感じているなら。
一之宮は、圧倒的な自然の力に触れ、自分に戻る場所かもしれません。
祈りは、日常に戻って完成する。
静岡の一之宮神社は、おおらかな自然とともにそう教えてくれる場所でした。

全国の「一之宮神社一覧」はこちらでご確認いただけます。
