東日本大震災の際にいただいた支援への感謝を胸に、福島から全国47都道府県の一ノ宮を巡る3巡目の旅を続けている「にう」です。
長崎県対馬の中心地・厳原町に鎮座する厳原八幡宮神社(いづはらはちまんぐうじんじゃ)を訪ねました。
※由緒書き等での正式名称は「八幡宮神社」とされています。

毎日を忙しく、他人のための役割を生きる中で、ふと「今の自分のままでいいのだろうか」と立ち止まりたくなる瞬間はありませんか?
日常のサイクルから少しだけ抜け出して、静かに深呼吸をする場所が欲しくなる・・・。
そんな名状しがたい心の渇きに背中を押されるように、私は3月12日、小雨混じりの空の下、対馬の地を訪れました。
午前中に海神神社を参拝し、町の中華屋さんで酢豚定食をいただき、お腹も心も満たされて元気を取り戻した午後。
フェリー乗り場にも近い厳原八幡宮へと車を走らせました。
予報では大雨でしたが、幸いにも空は持ちこたえ、しっとりとした薄曇り。
私にとって厳原八幡宮は、何か特別な答えをもらうというよりも、「旅の途中でそっと立ち寄り、今の自分を静かに振り返るための余白のような場所」でした。
また、全国の「一之宮神社一覧」はこちらでご確認いただけます。

厳原八幡宮とは?なぜ「一ノ宮」なのか

厳原八幡宮は、長崎県対馬市の中心地・厳原町に鎮座する歴史ある神社です。
その由緒は古く、神功皇后が三韓征伐からの帰途に対馬へ立ち寄った際、厳原の清水山に神霊の気配を感じて天の神・地の神を祀ったのが始まりと伝えられています。
鎌倉時代の歴史書『吾妻鏡』にも記録が残るほど由緒正しいお社です。
古くは「下八幡(下津八幡宮)」と呼ばれ、対馬北部にある海神神社(上津八幡宮)と対をなす形で信仰されてきました。
現代の「全国一の宮会」には加盟していませんが、歴史的に対馬国の一ノ宮であったと推定される「一之宮比定社(ひていしゃ)」として名を連ねています。
海神神社とあわせて、上下二社セットで一ノ宮としての役割を担っていたとする歴史家の意見もあるほど、格式高い神社です。
応神天皇(おうじんてんのう)
神功皇后(じんぐうこうごう)
仲哀天皇(ちゅうあいてんのう)
姫大神(ひめのおおかみ)
武内宿禰(たけのうちのすくね)の5柱が御祭神として祀られています。
壮大な歴史や神話を持つ一方で、地元の人々にとっては日々の暮らしに密着した「厳原の八幡様」。
お正月やお祭り、七五三など、人生の節目や日常の折に触れて足を運び、「今日も家族が健康でありますように」と家内安全や平穏を祈る、親しみやすい心の拠り所となっています。
【実体験】濃い緑の匂いと、牛の鳴き声の正体

レンタカーで神社の駐車場に入ると、神職の女性が、気さくに駐車場の整理をされていました。
「参拝の方は無料で、外に出られる方は500円ですよ」
わたしとほぼ同じタイミングでどこかに出かけるために車を停めた方もいて、街の暮らしに当たり前のように寄り添っている神社なのだなあと感じました。
フェリー乗り場が近いこともあり、恐らく韓国から訪れた団体客の方々の姿もありました。
地元の人々にも、海を越えてきた旅人にも、おおらかに門戸を広げている。
その飾らない佇まいが、とても心地よく感じられました。
勘違いから生まれた、心のゆるみ
境内はそれほど広大ではありませんが、山の麓に位置しているせいか、木々の緑がハッとするほど濃く、しっとりとした空気を漂わせていました。
ふと、山の奥から「モォー」という牛の鳴き声のような音が響いてきました。
「こんなところに牛が?」と耳を澄ませてみると、それは木を伐採するチェーンソーの音。
午前中に参拝した海神神社でヤギを目撃していたので、勝手に牛を連想してしまいました。
そんな自分の勘違いに一人でクスッと笑ってしまい、肩に入っていた力がふっと抜けるのを感じました。

境内を歩いていて何より目を奪われたのは、樹齢何百年になるのだろうと思わせるほどの、立派な太い木々たちです。
かつてそこにあったであろう大木の存在を感じさせる石垣も残っており、昔はもっとたくさんの巨樹がこの場所を守っていたのだと想像できました。
何も足さない、ありのままの鏡として
街中にある神社なのに、一歩足を踏み入れると街のざわつきは消え、鳥たちの声と、チェーンソーの音だけが響いていました。
周りを見渡しても、過剰な装飾や商業的な匂いはなく、社務所には昔ながらの素朴なお守りやお札が静かに並んでいるだけ。
ここには、何かを強く祈願したり、長時間長居してのんびりするような、わかりやすい癒しがあるわけではありません。
ただ「旅の途中にふらりと立ち寄り、今の自分の現在地を確認する」。
そんな鏡のような役割を果たしてくれる場所なのだと、深く息を吐き出しながら感じていました。

いただける御朱印・お守り・見どころ

- 御朱印:授与所にて、男性の神職の方がその場で丁寧に直書きしてくださいました。初穂料は500円です。
- お守り・お札:過剰な装飾などはなく、昔ながらの素朴でプレーンなお守りやお札が静かに並べられています。
御朱印をいただく際、いつも多めにお支払をしてお釣りを受け取らないようにしているのですが、今回はそうはいきませんでした。
「ちょっと待っててね」ときっちりとお釣りをお渡しいただきました。
きっと、コツコツと真面目にこの神社を護って来られたのだろうなと、なんだか暖かな気持ちになりました。
アクセス・駐車場・所要時間

厳原八幡宮は対馬の中心市街地である厳原町に位置しているため、対馬の中で最もアクセスの良い神社のひとつです。
これから参拝を予定されている方へ、お出かけ前の「失敗しないための情報」をまとめました。
移動手段とアクセスの目安
- 厳原港(九州郵船)から:徒歩で約10〜15分。フェリーや高速船を降りて、市街地を散策しながら歩いて向かうことができます。
- 対馬空港から:車・バスで約20〜30分。
わたしは対馬空港でレンタカーを借りて、海神神社へ参拝したのちに厳原八幡宮へ。
厳原港近くでレンタカーを乗り捨てて壱岐島行きのフェリーに乗りました。
厳原の街中から歩いてすぐですが、境内に入ると荘厳な空気に包まれます。
少し石段の幅が狭い箇所があるため、歩きやすい靴やスニーカーで行くことをおすすめします。
駐車場事情
境内に参拝者用の無料駐車場が完備されています。
市街地にありながら車で直接アクセスできるため、レンタカーで島を巡る際にも立ち寄りやすく安心です。
※ただし、お正月や地元のお祭りの時期(8月)は非常に混雑するそうです。周辺のコインパーキングの利用も検討してください
参拝にかかる時間と周辺の立ち寄りスポット
- サッと回るなら:20〜30分
- じっくり堪能するなら:45分〜1時間
街中のアクセスが良い場所にあるため、観光や買い物の合間にサッとお参りすることも可能です。
境内の宝物殿などを見学したり、緑豊かな境内を深呼吸しながらゆっくり散策して旅の疲れを癒やすなら、少し長めに時間を取っておくと良いでしょう。
また、厳原八幡宮の周辺は対馬のメインストリートです。
わたしは参拝後に厳原港からフェリーに乗ったため、のんびり出来なかったのですが、すぐ近くの和菓子屋さんで対馬名物の「かすまき」を食べ比べたり、おしゃれな地元カフェで一息ついたりと、城下町・厳原の風情ある街並み散策をそのまま楽しめるのが大きな魅力です。
海神神社の近くでは飲食店を見つけるのに苦労したので、対馬の一之宮参拝の際は、食事や買い物を厳原八幡宮の周辺が行えるよう旅程を考えてたほうが良さそうです。
参拝後の変化と、日常への戻り方
厳原八幡宮の鳥居を後にしたとき、島に降り立った時よりも少しだけ、呼吸が深くなっている自分に気がつきました。

数百年の時を超えて、ただそこにある巨樹。
誰が来ても拒まず、静かに迎え入れる開かれた空間。
ここでの時間は、私に「ありのままでそこに立つことの美しさ」を教えてくれました。
無理に自分を大きく見せる必要も、特別な何者かになる必要もない。
ただ、目の前の時間を味わい、自分の内側にある静けさに立ち返れば、それだけで人はまた歩き出すエネルギーを取り戻せるのです。
日常の喧騒に飲み込まれそうになっていた「焦り」を手放し、ただ今を感じる「静寂」を迎え入れる。
この対馬での数時間は、私の中で小さくとも確かな区切りとなりました。
私たちは皆、それぞれの人生という旅の途中にいます。
あなたが今、ふと立ち止まって振り返りたいものは何ですか?
いつか、あなただけの静かな答えに出会える旅の時間が訪れることを、心から願っています。
また、全国の「一之宮神社一覧」はこちらでご確認いただけます。
